あのおでん
今日はおでんを作っている。
いや、作ってはいないか。煮ている。明日のために。
煮て冷ましてを繰り返すほど美味しくなると思っているが、そういう訳でもないのだろうか。
とにかく吹きこぼして慌てながら、煮続けている次第である。
思い出という程ではないのだが、その昔学生時代にサークルの同期らと、屋台のおでんを食べたことがある。場所は東武東上線の東武練馬の駅付近だった気がする。
飲み会のあった帰りで、みんなで同期の家に泊まろうとなった時に「そういえば屋台の美味しいおでん屋がある」と言うので訪れたのだ。
そこで食べたおでんが、衝撃的な美味しさだったのだ。
そもそも、別にそんなに家のおでんは好きでは無かった。コンビニの大根と玉子は好きだったが、煮物でも味噌汁でもなくご飯に合うわけでもない(個人的感想だが)おでんは、正直立ち位置がよく分からなかった。
しかし屋台のおでんはどうだ。よーーーく味が染みていて美味い。具も全く知らないものが入っていて驚いた。
ここで牛すじというものを初めて食べて、とても感動した。なんだこの柔らかくほろりと溶ける肉は。
そして大きな里芋があったのも衝撃だった。ほっくりねっとりして、食べごたえがある。
なんだこれ。これがおでんなのか。美味いじゃないか。
シチュエーションも味の一環となったのかもしれない。18か19の子どもが、屋台なんて入ったことがあるはずもなく。サザエさんでしか見たこともなかったくらいだ。
だがその後そのおでん屋に遭遇する事はなく、2度とあのおでんを食べることは叶わなかった。いやー、後にも先にもあれが人生で1番美味しいおでんだった。
それからと言うもの、おでんには牛すじと里芋を入れるようになったが、あの味にはほど遠く。
やはり継ぎ足し継ぎ足しの、具の旨味の出た出汁がポイントなのだろうか。だとしたら、ずっとおでんを作り続けたら、いつかは近い味になって来るのだろうか。
ちなみに、今でもおでんは白米には合わないと思っている。
一応食べるが、ふりかけや漬物など別の味を足さないと米が進まない。
家人や友人は米が進むと言っているが、納得がいかない。
名古屋に来てからは、味噌おでんというものの存在も初めて知った。それはそれで美味しいとは思うが、出汁のおでんとは別物だと思っている。
静岡おでんなるものにも興味があったので、わざわざ静岡市まで電車で食べに行ってみたこともあった。牛すじの出汁と醤油、それと黒はんぺんにダシ粉。
全く違う文化で面白美味しかった。
私が行ったお店はこちらで、100年近く続く老舗とのこと。
その他にも日本各地にそれぞれ特色のある、地域のおでんが存在するとのこと。
いつかそれらを旅行ついでに食べて回りたいな、と思っている。…という、本日はいつの間にかおでん好きなひとになってたお話。